アメリカで普及している高齢者住宅「CCRC」の取り組みが、日本でも始まっています。「生涯活躍のまち(日本版CCRC) 構想」を実現させるためには、シニアの自立を支える仕組みと、ニーズの変化に応じた継続的なケアの確保が重要です。

 

継続したケア・サービスが重要


現在、多くの自治体が取り組んでいる「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想は、東京圏に集中するシニアを地方へ移住させる課題から出発したものですが、基本的な方向性として「健康でアクティブな生活の実現」と「継続したケアの確保」がうたわれています。

 

この点において米国のCCRCはシニアのニーズの変化に対応した継続的なケア・サービスの提供に成功しています。そこで今回は、米国の「メソジストビレッジCCRC」を紹介します。

 

このCCRCは、「非営利法人アシュベリー」が開発・経営・管理しているCCRCのひとつで、1926年に約16万坪の広大な土地を確保し、90年近くかけて造り上げられてきました。

 

全米で12番目に大きなCCRCと言われており、827室の自立型住まい、133室の支援型住まい、257室の介護型住まいから成り、およそ1400人の高齢者が暮らしています。そして自立型から支援型、介護型までと継続したケアを提供しています。

 

自立型住まいには2種類あり、アパート形式の集合住宅が710室、一戸建てホーム連棟式住宅のヴィラが117室あります。自立型住まいの入居費用で一番安いもの(居室面積40㎡)は、入居一時金800蔓延(90%は返還)、月々の利用料金は約16万円です。

 

アシュベリーは経営主体が宗教法人のため、高所得の人の負担を大きくすることで、低所得者も入居できるような仕組みをとっています。

 

アシュベリーは「私たちがサービスを提供する方々へ最高の暮らし方を提供するために、あらゆるサービスを行う」という基本理念に基づき、「入居者・職員・ボランティアに対する貢献」「財務の強さ」「品質とイノベーション」「真摯さ」の4つを大切な価値観として運営している、と言っています。

69_1

 

自立を支えるさまざまなサービスが充実


メソジストビレッジCCRCは認知症ケアやリハビリテーション治療のサービスも充実しています。
認知症ケアプログラムのひとつに「ポートレイト療法」(回想療法のひとつ)があり、入居者の歩んできた人生、思い出の写真などが居室の入り口に貼ってありました。

 

これは入居者の人生を振り返ることにより、認知症予防に役立てると主に、入居者とスタッフのコミュニケーションツールとしても役立っているそうです。

 

また、「生涯学習」にも力を入れており、歴史、自然科学、芸術、音楽などコースがあり、ジョンズ・ホプキンズ大学による生涯学習研究所でのコースを受講することもできます。

 

ほかにもさまざまな自立を支えるサービスがあり、例えば、食事サービス、運動プログラムのためのプール、屋内の歩行運動用通路、プール・フィットネスセンター、テニスコート、映画館及び劇場、コンビニエンス・ストアおよびカフェ、キャンパス・テレビ、プロダクション・スタジオ、リソース・ライブラリ、有線テレビ局、ITトレーニングセンター、キャンパス内外の交通サービス、在宅医療、外来医療、銀行及びATM、アートスタジオ、図書館、ギフトショップ、美容院、菜園、セキュリティー・システムなど、多岐にわたっています。

 

このように米国CCRCの自立型住まいには、さまざまなアメニティとサービスがありますが、わが国ではいまだその概念が希薄です。
日本版CCRC構想を実現していく上では、2000以上ある米国のCCRCをさらに研究していく必要があると思います。

69_2

※雑誌ゴールデンライフへの執筆記事から。