米国で普及している高齢者住宅「CCRC」の取り組みは、日本でも始まっています。今回は、米国エリクソン・チャールズタウンCCRCができ上がるまでを紹介しながら、日本版CCRCを実現するための課題について考えます。

 

チャールズタウンCCRCの起源


私がCCRCに深い関心を持ったのは、1992年のエリクソン氏とチャールズタウンCCRCとの出会いがきっかけです。

 

エリクソン氏は、米国の首都ワシントンDCのベッドタウンであるメリーランド州ボルチモアの廃校になった神学校を購入し、1981年にチャールズタウンCCRCの開発をスタートしました。

 

このCCRCの目玉ともいえる特色は、入居一時金を100%返還することでした。このためミドルクラスの幅広い経済相の高齢者が入居できるCCRCのパイオニアとなりました。

 

CCRCの開発は州法で規定されており、州の認可を受けなければなりません。チャールズタウン開発の手順は、まず大学校舎を改修して200室の自立型住まいを作り、満室になった2年後、さらに改修して200室を作りました。
 

その後、支援型住まいと介護型住まいを新築しました。さらに後に自立型住まいを増築し、1993年に計画が完了しました。最終的に自立型住まい1570室、支援型住まい132室、介護型住まい270室を備える大規模なCCRCとなりました。

 

エリクソン氏に規模について尋ねると、最初からこの規模にしようと考えたわけではなく、申し込みが続々とあったため敷地に応じて拡大していったそうです。

 

チャールズタウンCCRCは開発完了後、入居者で構成される非営利法人(NPO)によって購入され、NPOの資産となりました。

 

購入式は入居者の一時金です。このビジネスでエリクソンリビング社は、チャールズタウンCCRCを約252億円で売却し、62億円の利益を上げたと報告されています。

 

このようにCCRCは、健康支援を行う自立型住まい中心の事業で利益をしっかりとエルビジネスモデルでもありますが、日本ではいまだ構築されていません。
なお売却後もNPOはエリクソンリビング者にうん得緒を委託契約しています。

 

昨年チャールズタウンCCRCを再訪しました。CCRCのい使命である理念「自立した段階から、介護・医療が必要となる段階まで、同じ敷地内で継続したケアや生活支援サービスを受けながら、様々な活動に参加し、できるだけ自立をして生活し、最後まで暮らせるサービスを提供する」を実現するシステムがさらに充実していました。

 

入居者は技師、教師、販売員、配管工などのミドルクラスの方が中心で、ミドルクラスが入居できる費用となっています。

 

フィットネスセンターでは、担当トレーナーが個別に具体的な運動プログラムを作ってくれ、最新の運動設備があります。またプールで遊泳や水中バレーボールも楽しめます。

 

CCRC内のメディカルセンターでは、医師が24時間毎日音コール(※)体制をとっています。

 

介護型住まいでは、長期看護ケアや短期リハビリテーションが提供され、このCCRCでは寝たきりになる確率が全米全体の1/3という報告もあります。

 

神学校の廃校をリノベーションして作ったチャールズタウンCCRC

 

日本版CCRCを実現するための課題は6つ


我が国が推進している日本版CCRCがいまだ実現しないのは、何が問題なのでしょうか?

 

実現のための課題を、次の表の6つに整理しました。
これらは取り組みやすい順に並べてあります。

 

◆日本版CCRC実現のための6つの課題
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1.使命であるCCRCの理念を持つ

2.理念を実現するためのハードとソフトを構築する

3.介護費用負担の考え方・方法へ対応する

4.開発方法と経営方式を構築する

5.日米の生活習慣と文化の違いを知り、対応する

6.規則と制度を時代に合わせ改革する
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まず大切なことは、「使命であるCCRCの理念を持つ」ことだと考えます。
継続したケアを提供し、同じ場所で最後の看取りまで生活できること、すなわち「人生の継続性を実現する」という理念がCCRCのベースとなりますが、日本ではその土壌を作ることが課題です。チャールズタウンCCRCの職員は、全員が前述した使命としての理念を共有し、実行しています。

 

6つ目の課題「規則と制度の改革」は、特に容易ではありませんが、日本の社会保障制度や文化、生活スタイルが今までと大きく変化している中で、旧態依然とした規制や制度もあります。経済特区という制度も生まれ、地域の特性を活かした改革を考慮する必要があると考えます。

 

次回以降も、日本版CCRCをじつげんするにあたっての課題を見ていきたいと思います。