アメリカで普及して いる高齢者住宅 「CCRC」 の魅力は、入居者が経営に参画できる点と、入居費用が格安になるしくみにあります。これが日本でも実現できれば、魅力的な「生涯活躍のまち」が各地に誕生するはずです。

 

2025年問題に向けた「生涯活躍のまち(日本版CCRC)構想」


これからの我が国は人口減少が大きな問題となります。現在の日本の人口は約1億2681万人ですが、何も対策をしなければ2050年には1億人を割り込み、2100年には5000万人を割り込むと推測されています。さらに東京圏への人口一極集中も問題で、昨年は東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)へ約11.9万人が転入し、地方都市はその分だけ過疎化が進行していくことになります。

 

団塊の世代が75歳になる2025年には、東京圏では医療・介護サービスを必要とする高齢者が急増し、その介護ニーズにどうやって対応していくかも政府の主要課題となっています。これらの問題を解消するためにできた政策が、「生涯活躍のまち(日本版CCRC)構想」です。この構想については昨年12月11日に最終報告が出され、全国の多くの自治体が実現に向けて動き始めています。発表されためざす3つの構想と7つの基本コンセプトを図1に示します。

67_1

 

入居者が参画する「生涯活躍のまち」


図1のコンセプトである『⑥入居者の参画・透明性』は日本版CCRCを普及していく上で重要です。これには昨年米国で視察したCCRCの中でも「メープルウッド・パークプレイスCCRC」の経営のしくみが役立ちます。このCCRCは経営に入居者が参画する

 

このCCRCは経営に入居者が参画するしくみとして、2つのボード(評議員会)があります。ひとつは入居者からなる評議員会で、もうひとつは入居者の代表と外部の経営の専門家からなる評議員会です。

 

2つの評議員会は、CCRCのリーディングマネジメント会社「サンライズ社」によってサポートされ、質の高いサービスの維持、建物のメンテナンスなどに取り組んでいます。また入居者は、食事委員会、品質委員会、図書委員会などの多様な20の委員会に参加し、QOLの向上に努めています。

 

メープルウッド・パークプレイスCCRCの規模は、一棟のマンション形式の建物に「自立型」「支援型」「介護型」の3種類の住まいがあり、夫婦入居が約
62歳から入居可能ですが、実際には70歳以上から入居する人が多く、平均年齢は84歳です。

 

居室には台所があり、皿洗い機やオーブン、電子レンジ、大型洗濯・乾燥機、冷暖房空調機、トイレ、風呂、スプリンクラー装置、ケーブルテレビがあります。共用部分は、魅力的なデザインのホールや廊下、食堂、映画館、社交場、ダンスホール、絵画教室、ゲーム用クラブ室、パソコンを備えた図書館、ビリヤード設備、理美容室、診療所、駐車場、銀行まで備わっています。ここでは予防・医療・介護を含むあらゆるサービスが、同じ建物の中で受けられます。

 

このように充実した共用設備とプログラムがありながら、入居者が運営に参画でき、しかも入居生活費用は理にかなった格安なしくみとなっています。
67_2

理にかなった入居費用が実現するしくみ


メープルウッド・パークプレイスCCRCへ入居するためには、自立型住まいの「分譲マンション」 と 「共用部分の利用権」 を同時に購入し、月額利用料金を月々支払います。例えば13万円で、毎日の食事(1食)と、さまざまな生活支援サービスが利用できます。

 

そして退去時は、次の入居者へと販売されます。米国のマンションは通常、購入価格よりも高く売買されるので、退去時には購入価格と同程度が返金され、また共用部分の利用権も90%が返還されます。(図2参照)

 

日本版CCRCの居室の権利も退去後、米国のように次の入居者に販売する合理的なしくみを、日本の制度の下で構築する方法を創意工夫していく必要があります。

67_3

※雑誌ゴールデンライフへの執筆記事から。