アメリカで普及している終の住処「CCRC/高齢者健康コミュニティ」は、なぜこんなにもアメリカのシニア層に受け入れられているのでしょうか。今回から4回にわたってその秘密に迫ります。

 

アメリカの高齢者住宅は、特に後期高齢者のニーズに応えるよう様々に発展してきました。終の住処の理想モデルとしてアメリカで普及している「CCRC(Continuing Care Retirement Community/高齢者健康コミュニティ)」もその一つです。

 

アメリカには、2000近くのCCRCがあり、およそ80万人の高齢者が余生を豊かに暮らしています。それぞれのCCRCには独自の特色がありますが、共通の特色として次の4つがあります。

 

①継続したケアを提供するための理念とシステム
②質の高いサービス(QOL)を提供するための理念とシステム
③経営の安定確保システム
④多様な利用料金システム

 

です。

 

今回はそのうちの①「継続したケアを提供するための理念とシステム」について紹介します。

 

CCRCの継続したケアを提供するための理念とシステム


CCRCの特色は、高齢者のニーズに応じて「自立型住まい」「支援型住まい」「護型住まい」と住み替えられる3種類の住まい、そして各住まいへのサービスを統括するシステムが、バランスよく機能していることです。

 

自立型住まいのサービス


「自立型住まい」での月額利用料金に含まれるサービスについては、食事は1日1回の提供が標準となっています(全体のの72%)。ダイエット食は全体の8%が利用料金の中で提供しています。提供サービスを多い順から挙げると、

 

①社交・スポーツ活動
②宗教サービス
③非常 通報サービス
④24時間の安全サービス
⑤定時の移送サービス
⑥清掃

 

という順です。
この中で日本ではめずらしい宗教サービスは、心のケアとしても重要なサービスになっています。身体介助サービスはほとんど行われていませんが、服薬介助は全体の約15%が利用料金に含まれており、自立した高齢者であっても服薬については介助が必要な場合もあることがわかります。そして介護予防サービスは55%で提供 されており、介護予防のための取り組みが重要であることが推測されます。

 

支援型住まいのサービス


「支援型住まい」では、自分でできることは可能な限り自分で行い、できる限り寝たきりにならないように様々な支援プログラムが充実しています。

 

介護型住まいのサービス


「介護型住まい」では、寝たきりになった高齢者に時間の医療・看護・介護サービスを提供します。それぞれの段階で提供されるサービス例を図に示しました。例えば、このCCRCの「支援型住まい」はA~Dの4段階に区分されており、さらに「介護型住まい」への移行レベルのサービスがあります。
移行サービスでは次の5つ、

 

①専門看護師による密接なモニタリング
②日常生活へのスタッフの介入
③風呂・着替え・身支度の全介助
④食事の全介助
⑤認知 症行動に関するソーシャルワークチームの全介助

 

が追加されます。

 

そして最終ステージの「介護型住まい」では、
①毎日の心理的支援サービス
②個別のケアサービスプラン
③毎日の ハウスキーピング
④必要に応じて居室内での食事サービス、
⑤歩行の全介助
⑥傷害のケア
⑦排泄・入浴の全介助

 

の7つが追加され、医療・看護・介護サービスが連携して最期まで継続したケアが提供されるプログラムとなっています。

 

このようにCCRCでは自立した段階から、加齢と共に少しずつ支援が必要な段階を経て、人生の最終的な段階まで継続したケアが提供され、尊厳違守を基本として最後まで豊かに暮ら せる仕組みと理念が整っています。これがアメリカでCCRCが普及している理由のひとつといえるでしょう。

 

各段階で継続して提供されるケアサービス

 

※雑誌ゴールデンライフへの執筆記事から。