米国で普及している高齢者住宅「CCRC」の取り組みが日本でも始まり、超高齢社会における地方創生の施策として期待されています。しかし実現に向けては多くの課題があるようです。前号から引き続き、その課題についてみていきます。

 

団塊世代が後期高齢者となる2025年は大転換期


日本は2025年に、1947年〜1949年に生まれた生まれた団塊世代の約800万人が75歳以上の後期高齢者になり、そのとき要介護者や認知症の人などが急増していくことが想定され大きな転換期を迎えます。それまでに少子超高齢社会に対応した新しい社会保障制度を実現するために医療、介護、年金の各分野の本格的な改革が不可欠となっています。

 

特に医療と介護の分野では高度急性期(※)から在宅医療介護までの一連の切れ目のないサービスを提供するために、地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。地域包括ケアシステムの定義は「医療・住まい・予防・介護・支援が一体的に提供される仕組み作り」で、これまでの共助・公助だけでなく、自助・互助も重視しています。CCRCのコンセプトは地域包括ケアシステムと通じるところが多く、私共では日本版CCRCが、地域包括ケアシステムの中心となり機能するものと提唱しています。

 

自立型住まい実現のために必要なサービス


厚労省のデータによれば、日本の介護型住まいは約134万室ありますが、自立型住まいは約8万室しかありません。一方、欧米の福祉先進国では、自立型住まいの方が介護型住まいより多くなっており、日本での自立型住まいの整備は不可欠となっています。その際、米国CCRC参考にしながら日本の文化や制度などを踏まえて提供するサービスを検討していく必要があります。

 

CCRCの3種類の住まいで提供されるサービス

 

表1は、3種類の住まいで提供される主なサービスです。自立型住まいでは、各入居者の希望やニーズに応じた「生涯活躍プラン」が必要です。そして、できるだけ長く自立して生活していくための理念が重要です。その規範となるのが、高齢者ケア先進国であるデンマークの福祉三原則です。

 

デンマークでは、1980年に「高コストな施設ケアに主眼を置く福祉体制」が見直され、高齢者の身体的虚弱化をカバーするケアではなく、社会的役割と交流の創出に主眼を置くべきであることが確認されました。すなわち社会的役割やつながりを持つことを重視しています。つまり自立型住まいに必要なことは、自己決定、生活の継続性、残された能力を活用することです。そして人生を楽しみながら、生き生きと生活することです。

 

これらの考えに基づいて米国CCRCでは、起床から就寝までさまざまなサービスが用意されています。まず大切なものが検診・予防サービスで、次に健康維持のためのフィットネスサービス。そして生活を楽しむための多種多様な趣味活動、生涯学習活動があります。さらに社会貢献・ボランティア活動が生活に浸透し、地域で社会的な役割を持つことが生活の糧となり、健康寿命を延伸することに繋がっています。

 

表2は、自立型住まいで提供されるサービス内容です。食事は1日1回の提供が72%のCCRCで標準になっています。提供サービスを多い順に示すと、
①アクティビティ活動
②宗教サービス
③非常通報サービス
④24時間の安全サービス
⑤定時の移送サービス
⑥清掃

となっています。2番目に多い宗教サービスは、日本ではほとんどありませんがこころのケアとして重要なサービスです。

CCRCの自立型住まいで提供される標準的なサービス