CCRCの実現には社会的イノベーションが必要
2003年、我が国は、将来の医療介護の形として「地域包括ケアシステムの構築」という政策を発表しました。
2014年からは地方の経済再生と人口減少対策として「障害活躍のまち(日本型CCRC)構想」という施策を進めており、「地域包括ケア」と「日本型CCRC」の密接な連携の必要性が強調されています。
しかし地域包括ケアシステムは、目標達成年度である2025年まであと9年となり、構想が進行しないジレンマがあります。
経営の神様と呼ばれるピーター・ドラッカーは、2002年に書いたネクスト・ソサエティの冒頭で、「日本の読者へ」という題でこう述べています。
「日本では誰もが経済の話をする。だが、日本にとって最大の問題点は社会のほうである。(中略) 日本の社会的なっ制度、政策、観光は1990年ごろまでは有効に機能した。だがもはや満足に機能しているものは一つもない。社会的イノベーションが求められている。」
日本型CCRCと地域包括ケアシステムを実現するためには、現状の制度や慣行の延長ではなく、社会的イノベーションが不可欠です。そのためにも、「先に起こった未来」といえる米国CCRCの研究をさらに進めていく意義は大きいと考えます。
資産として購入できる都市型CCRC
今回は、都市型CCRC「ジェファーソン」を紹介します。
ジェファーソンは1981年、首都ワシントンDCのベッドタウンであるバージニア州アーリントンの地下鉄駅直近に開発されました。
建物の玄関入り口(※写真1参照) を挟んで、向かって左側に自立型住まい325室があり(写真2参照)、右側にケアセンター、その1階に自立支援のためのプール付きフィットネスセンターがあります(写真3参照)。
※写真1
※写真2
※写真3
そして、継続したサービスとケアを提供する支援型住まい38室、介護型住まい31室、認知症型住まい19室があり、合計413室のCCRCです。
ケアセンターの経営は、米国最大のCCRC開発運営会社であるサンライズ・シニアリビング社(Sunrise Senior Libing 以下サンライズ社と略す)が行っています。
自立型住まいはCCRCとしては特別なタイプで、入居者が資産として購入する分譲マンションとなっています、分譲マンションの運営とマーケティングは、サンライズ社が入居者と委託契約して行っています。
サンライズ社の沿革は興味深く、現在の会長兼CEOのクラッセン氏とその夫人が。1981年に首都ワシントンに隣接するバージニア州の1軒家を改修して始めたサンライズホームが始まりです。
同社は一貫して入居者中心主義に基づき、シニアの生活の質向上を目指して発展してきました。
そのサービス理念は、
「自立の促進」
「自由な選択」
「尊厳の保護」
「個性の尊重」
「家族や友達との関わり」
を重視することです。
この理念に基づき、入居者がホームに順応するのではなく、ホームやスタッフが入居者1人ひとりのニーズに合わせていくサービスを構築しています。
サンライズ社がジェファーソンCCRCで提供しているサービス・プログラムは実に多様です。自立を支えるために、
・礼拝
・映画上映
・美術館のツアー
・内部コンサート
・ウォーキングツアー
・ヨガ
・ダンス
・トランプ(ポーカー、ブリッジ)
・水中エアロビクス
など
さまざまな趣味活動を行うカルチャールーム(写真4参照)が2階に3室あります。
※写真4
病気で入院しリハビリテーションが必要になった時は、早期に退院してジェファーソンでリハビリを受けることができます。そして介護型住まいでは、24時間の介護が提供されます。
米国では、サンライズ社のようなCCRC開発運営事業者が多種多様にあり、それぞれが経営について特色とノウハウをもっています。日本型CCRCを実現していくためには、それらを研究していく価値は大きいと考えます。