介護レベルに合わせて住まいを3つに分ける
日本の高齢者施策の問題点は、、自立を支援するための高齢者住宅、すなわちCCRCでいうところの「自立型住まい」がほとんどないことです。
さらに、例えば要介護1と要介護5の方では必要な介護サービスが異なるわけですが、現状の介護施設では、各介護レベルに合ったサービスを提供できる住まいに分けられていません。
米国CCRCでは、入居者の加齢に伴う身心の変化に応じて、適切なサービスが継続して提供できるよう「自立型住まい」「支援型住まい」「介護型住まい」の3種類のハード(居室と共用設備など)に分けられています(表1参照)。
自立型住まいには、日本の要介護度でいえば自立したシニアから要支援1・2程度の人が入居し、できる限り自立して暮らせるような居室・共用部分がデザインされています。
支援型住まいには、要介護1から3程度までの人が生活し、介護サービスや認知症対応サービスが必要な人のための居室がデザインされ、要介護度が悪化しないよう今ある能力を生かして暮らせるような工夫がされています。
介護型住まい(ナーシングファシリティ)には、要介護4以上の人に必要な介護・看護サービスが24時間体制で提供され、尊厳を守りながら看取りまでを行えます。介護型住まいは、日本の介護療養型医療施設に近いものといえます。
これら3種類の住まいについて、その違いを写真で示します(表2・3参照)。
米国CCRCの自立型住まいの居室は、広さは60㎡程度。バリアフリーは当然で、非常用通報設備があるほかは一般住宅と基本的には変わりません。共用設備に食堂、居間、趣味活動の部屋、図書館、プールなどがあります。
交流の場でもある自立型住まいの食堂は、ウェイトレスが注文を受け、入居者は2~4種類のメニューの中から自由に選ぶことが多いようです。
支援型住まいは、米国だけでなく北欧や英国でも普及し、介護・看護レベルが重度化しないように、できないことを支援するという考え方の住まいです。その広さは20㎡程度、居室には入浴のためのシャワー設備があります。共用設備は食堂、リビング、リハビリ室、趣味活動などのための多目的ホールがあります。食堂は車椅子や歩行器を使い自力で移動、着席できるようにデザインされています。日本には支援型住まいという考え方がありませんでしたが、取り入れていく意義は大きいと思います。
介護型住まいの広さは13㎡程度で、酸素・吸引設備が装備されたところもあります。食事は着替えて車椅子に移乗し、寝かされたきりにならないようにしています。入浴は介護浴槽で介護サービスを使います。
支援型・介護型住まいは必要に応じて増築
米国CCRCの特徴は、自立型住まいと、支援型・介護型住まいが、2段階で建築されることです。
まず自立した健康なシニアが住むための自立型住まいが建築されます。自立型住まいに入居したシニアは、趣味活動を中心に社会活動、生涯学習を行い、健康を維持するためにフィットネスや定期健診を行います。それでも加齢とともに10人に1人ほどは生活支援や介護が必要なケースが出てきます。それらを踏まえて通常3~5年後に、支援型住まいと介護型住まいが増築されます。いわばCCRCは保険システムのようなものなのです。