地方創生に向けた政府の取り組みのなかで、シニアの新しい終の住処「日本版CCRC/高齢者健康コミュニティ」に注目が高まってきています。先号から引き続き、 国から発表された「日本版CCRC構想」についてお話しします。

 

ローカル・アベノミクス実現に向けた「CCRC構想」


アメリカで普及している終の住処「CCRC/高齢者健康コミュニティ」は、地方創生をキーワードに、シニアの新しいライフスタイルとして、日本でもその取り組みが本格的になってきました。

 

しかし日本の出生率は、最近の統計によれば9年ぶりに低下し、地方から東京への人口流入も続いています。地方では人口減少が進み、消費回復は大都市圏に比べて遅れているなど、地方創生への道は厳しいものがあります。こうした基本認識に基づいて政府が策定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」では、将来にかけて、

 

①「人口減少問題の克服」
②「成長力の確保」を図ることを目指し、「地方創生の深化」に取り組んでいく

 

ことが基本方針となっています。

 

この平成27年6月12日に発表された「ローカルアベノミクスの実現に向けて~まち・ひと・しごと創生基本方針・検討チーム報告書」の中でも、地方経済の実態について言及しており、地域経済の活性化と地方創生のために、地方に人材と資金を呼び込むような生産性の高い活力のある産業を再形成していくことが、緊急の課題となっています。

 

ローカル・アベノミクス(アベノミクス地方戦略)には、具体的に3つの基本戦略があります。
すなわち、

 

①「稼ぐ力」を引き出す。
②「地域の総合力」を引き出す。
③「民の知見」を引き出す。

 
です。それぞれの主要施策は、「稼ぐ力」については日本版DMOです。
これはDestination Management/MarketingOrganization の略で、「さまざまな地域資源を組み合わせた観光地の一体的なブランドづくり、ウェブ・SNS等を活用した情報発信・プロモーション、効果的なマーケティング、戦略策定について、地域が主体となって行う観光地域づくりの推進主体の創設」となっています。「民の知見」については、「地方創生特区」であり、そして「地域の総合力」では、私どもが取り組んでいる日本版CCRC構想の実現です。

 

日本版CCRC構想は、いまや地方創生の大きな柱となりました。内閣府では有識者会議を中心に、その骨組みや地方での進め方も議論が進み、7月3日の第6回日本版CCRC構想有識者会議では、「日本版CCRC関連の構想・取組を整理するにあたって参考とした事例」が全国から11選ばれました。その
11事例を表1に示しますが、既に運営が開始されている先進事例が3箇所、地方版総合戦略に盛り込む予定の地方公共団体の構想が8例となっています。

 

■表1
日本版CCRC関連の構想・取組の整理のための参考事例

 

日本版CCRC 姶良JOYタウン構想


この中の「鹿児島県姶良市(医療法人玉昌会)」の「日本版CCRC姶良JOYタウン構想」は、医療法人が病院の移転(建て替え)と併せ一体的に整備することでCCRCの実現を検討するもので、姶良市の地域包括ケアシステムを基盤とした「コンパクトシティ姶良」の構築に協力していくものです。

 

このJOYタウン構想について、私どもは2008年から玉昌会と共同研究を続けてきました。そして構想の方向性を、医療福祉経営マーケティング研究(第4巻第1号、2009年)で発表しています。その中で、「CCRCとは継続したヘルスケア(医療、予防、介護)提供するという福祉哲学に基づき、住宅と医療と介護にアメニティサービスを総合的におこない、高齢者の新しいライフスタイルを提供するものである。CCRCは、高齢者の自立と健康ニーズに対応することにより、人生の最終ステージをいきいきと豊かに過ごすことにより、医療・介護コストを最適化するモデルとして実績をあげている。このモデルを介護型療養病床の事業転換に活用していく」と述べています。

 

それから7年が経過し、地方創生の主要施策としてCCRCが注目されています。医療法人玉昌会は、新たな視点を加え、日本版CCRC姶良JOYタウン構想としてビジョンとコンセプトをまとめ直し、その内容は内閣府の「まち・ひと・しごと創生本部のホームページの有識者会議資料」にアップされています。その詳細については、次号でご紹介したいと思います。

 

日本版CCRC姶良JOYタウン構想

 

※雑誌ゴールデンライフへの執筆記事から。