アメリカで普及している終の住処「CCRC/高齢者健康コミュニティ」は、なぜこんなにもアメリカのシニア層に受け入れられているのでしょうか。
それは「CCRCを入居者の資産として守る」仕組みが、システム化されていることにありました。

 

人口減少時代の日本に必要な施策とは


アメリカの高齢者住宅は、特に後期高齢者のニーズに応えるよう様々に発展しています。終の住処の理想モデルとしてアメリカで普及している「CCRC(Continuing CareRetirement Community/高齢者健康コミュニティ)」もその一つです。

 

CCRCが入居者に提供する4つの特色の1つとして、入居者の権利、経営の安全・安定性を守る仕組みがあります。つまり、CCRCを入居者の資産として守る仕組みが、システム化されているのです。

 

我が国は2008年に人口のピークを迎え、人口減少時代に突入しています。このままであれば人口は急速に減少し、その結果、経済規模が縮小し、生活水準の低下が起こり、社会保障制度の維持が危うくなる危険性があります。政府はその対策として、「急速に進む人口減少を克服し、地方が新たに成長する力を取り戻す」ために、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」を策定しました。国の長期ビジョンとして、これから45年後の2060年に「1億人程度の人口を維持する中長期展望」を提示しました。

 

この目標を達成するために、地方は人口動向や産業実態を踏まえ、それぞれの特色に応じた「地方版総合戦略」を2015年から2019年度にかけて策定することになっており、4つの基本目標があります。その内容は、

 

①地方における安定した雇用を創出する
②地方への新しいひとの流れをつくる
③若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
④時代に合った地域をつくり、安全な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する

 

となっています。この基本目標達成の施策の1つに、「『日本版CCRC』の検討、普及」が取り上げられました。ちなみに、この政策のなかでCCRCについては、「米国では高齢者が移り住み、健康時から介護・医療が必要となる時期まで継続的なケアや生活支援サービス等を受けながら生涯学習や社会活動等に参加するような共同体」といっています。

 

米国CCRCは経営主体の公平性、透明性を確保


今後、日本の風土と文化に合致した日本版CCRCをつくり上げ、高齢社会に貢献するためには、米国のCCRCをさらに研究し、日本流にイノベーションしていく必要があります。

 

米国のCCRCは100年以上の歴史と実績を持ち、現在およそ2千ヵ所、約80万人が暮らしています。米国CCRCでは経営主体の安定を図るために、経営主体、開発事業者、運営事業者が分離されるケースがほとんどで、次のような特徴があります(図1)。

 

①事業主体はほとんどの場合、非営利(NPO)法人となっている。
②NPO法人の評議委員会では、利害関係を持たない役員を指名する。例えば、公認会計士、弁護士、元経営者など。
③入居者の中から評議員に入ってもらい、CCRCの経営に入居者の意見等を反映する。

 

このようにCCRCは、経営主体の公平性、透明性を確保するような仕組みとなっています。

CCRCの経営主体

 

CCRCを入居者の資産として守る仕組み


開発事業者は、開発、マーケティング等に専念し、CCRCの入居が進めば、その経営主体に資産(土地・建物)を売却します。(図2)
開発事業者は、適切な利益を確保し、長期間にわたり、資産を保持するというリスクを回避できます。通常は3年程度で、経営事業者に売却されます。

 

一方、運営については、マネジメントに特化した運営事業者が、入札等により選定され、入居者のニーズ、満足度を評価、フィードバックします。運営事業者はおおむね2年契約とし、入居者の満足度が低ければ、次の入札を行い、新しいサービス事業者に切り替えることができます。

 

 このようにアメリカでは、CCRCを入居者の資産として守る仕組みがシステム化されており、我が国でも日本の制度・法律を踏まえ、仕組みを検討していく必要があります。

経営の安定化のための3権分立

 

※雑誌ゴールデンライフへの執筆記事から。