地方創生に向けた政府の取り組みのなかで、シニアの新しい終の住処「日本版CCRC/高齢者健康コミュニティ」への注目が高まっています。今回は鹿児島県姶良市の「日本版CCRC姶良JOYタウン構想」について紹介します。

 

CCRCで健康寿命を延ばす


7月30日に厚生労働省が公表したデータによると、日本人の平均寿命(2014年)は、男性が80.50歳、女性が86.83歳となりました。男性の平均寿命が80歳を超えるのは2013年からで、これで2年目となります。平均寿命が延びる一方、近年は健康寿命を延ばすことの重要性が問われています。

 

健康寿命とは、介護を必要とせず暮らせる期間のことです。平成22年の「健康日本21」の資料によると、男性は平均寿命が79.55歳に対し健康寿命は70.42歳、女性は平均寿命86.30歳に対して73.62歳です。米国のCCRCの理念は、健康寿命を伸ばし、Quality Of Lifeの高い自立した生活を提供することです。日本版CCRCの目的も「地方移住」だけではなく、移住した高齢者に自立の段階から健康予防、医療と介護の心配のない環境が提供されることにより、一人ひとりの人生の継続性を尊重し、自立支援に最大の関心を払うことで健康寿命を延ばし、いかに豊かな人生を送ってもらうかにあります。

 

日本版CCRC「姶良JOYタウン構想」


今回は、前号で紹介した11つの日本版CCRC先進事例・計画のうち、 鹿児島県姶良市の「日本版CCRC姶良JOYタウン構想」について紹介します。

 

私が主席研究員を務める九州大学の医療福祉経営マーケティング研究会は、2008年から医療法人玉昌会の加治木温泉病院の移転を考え、JOYタウン構想を検討してきました。加治木温泉病院は、鹿児島県姶良市にある一般病床、回復期リハ病棟、医療療養病床、介護療養病床をもつ350床のケアミックス医療機関です。今年7月に一般病床を地域包括ケア病床に転換し、姶良市の地域包括ケアシステムの構築に寄与していく体制を強化しました。

 

 

2008年当時、医療の課題は介護療養病床の廃止、転換で、医療と介護を一体的に提供し、医療・介護コストを最適化していくことでした。そこで、そのモデルとなる構想を模索してきました。しかし社会保障改革が進むなかで、医療・介護政策が「病院完結型」から、地域全体で支える「地域完結型」へと移行し、さらに2010年には医療・介護・予防に加え、生活支援サービスや住まいも継続的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築が提唱され、医療介護のパラダイムシフトが起こりました。

 

これらをかんがみて、JOYタウン構想は、医療・介護に加えて健康予防、多世代交流、そして東京圏からの地方移住を加えた地方創生を基軸に構想を見直す必要性があると考え、その計画を「日本版CCRC姶良JOYタウン構想」としてまとめ直しました。

 

JOYタウンの立地条件は、厚生年金福祉施設サンピアあいらの建物跡地(約1万2千坪)を活用するものです。JOYタウン構想は、姶良市のコンパクトシティ構築に寄与すると共に、「住まい」、「医療」、「介護」、「健康予防」、「教育」を総合的に提供し、東京圏および地域からの「移住」の受け皿となることを目的とします。多世代の新たな住まい、人生のあり方という観点から、

 

・希望に満ちた暮らしができる環境
・歳を重ねるごとにワクワクできる環境
・可能な限り主体的に人生をおくれる環境

 

が活気を生み出し、定住、交流人口の増加へと流れに変化を起こせるのではないか、と考えます。お元気な方々から医療介護が必要な方々、全ての方々が、ご自分の人生を堂々と歩み、その方らしいレスペクトを持てる場を、CCRC JOYタウン構想には、多くの想いと願いが込められています。もし、JOYタウン内で病気になっても近隣の医療機関が連携し、介護サービスが必要になってもJOYタウン内の介護施設や在宅サービスを活用し、住み慣れた場所で人生の最期まで生活を継続できるように、地域包括ケアシステムの拠点環境を整備していくものです。

 

 

※雑誌ゴールデンライフへの執筆記事から。