アメリカで普及している高齢者住宅「CCRC」の取り組みが、日本でも始まっています。「生涯活躍のまち(日本版CCRC) 構想」は、介護費用増加を抑制するだけでなく、大きな経済効果まであると期待されて います。

 

2025年問題に向けた「生涯活躍のまち(日本版CCRC)構想」


我が国は、他の先進国よりいち早く超少子高齢化社会を迎え人口減少が始まっており、この2つの問題を克服していくことが急務となっています。このピンチをチャンスに変え、これらの課題に取り組んでいくために平成26年11月「まち・ひと・しごと創生法」が策定され、内閣総理大臣を議長とする「まち・ひと・しごと創生会議」が開催されました。

 

そして平成26年12月の閣議決定において「まち・ひと・しごと創生総合戦略2015(案)」がまとめられ、4つの基本目標が整理されましたその基本目標のひとつである「地方への新しいひとの流れをつくる」を達成するための施策として、「日本版CCRC」構想の推進が策定されたのです。

 

その目的は、東京圏および地方の高齢者が健康なときから地方に移住し、健康状態に応じた継続的なケア環境の下で自立して安心な老後を過ごすことができるような地域共同体(日本版CCRC)について検討を進めることです。

 

アクティブシニアが暮らすCCRCの経済効果


さて、生涯活躍のまち(日本版CCRC)構想に消極的な自治体が問題にあげる点が、東京圏などから高齢者を移住させた場合、要介護者の高齢者が増加し、地方の介護保険財源が圧迫されるのではないか、という議論です。今回はこの問題ついて考えてみます。

 

日本版CCRCへ移り住む高齢者は、原則として健康でアクティブなシニアです。この条件が、今までの高齢者施設と大きく違いますそこで例えば100室のCCRCを建設した場合の介護費用への影響について考えてみます。

 

表1に2つの自治体の高齢者数、要介護認定率、介護給費費などの関係データを示します。その1つは、埼玉県和光市です。和光市は、全国に先駆けて介護予防に取り組み、全国で要介護認定率の1番低い自治体として有名です。一方、A市は平均的な地方自治体です。

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日本版CCRCでは、栄養、運動を含む介護予防プログラムが充実するので、A市に新設した日本版CCRC居住者の要介護認定率は、和光市のように10%程度になるものと仮定します。とすれば、100人のアクティブな高齢者のうち数年後に要介護認定者になるのは、その10%の10人になるわけです。1人150万円の介護費用ですので、年間1千500万円の介護費用が発生することになります。

 

一方100人のアクティブな高齢者が生む経済効果は、消費額が1人年間240万とすれば、100人の消費額2億4千万円の消費税(8%)だけで、1千920万円と介護給付費を上回る経済効果が期待できます。

 

これにCCRC居室の固定資産税を合わせれば、増加する介護給費の2倍以上の経済効果が生まれることになると考えます。さらに、大きな経済効果として、A市に日本版CCRCができることにより和光市のように介護予防が促進され、A市の要介護認定率が現状の26・5%から5~10%減少できた例を考えてみます。(表2)

 

A市の要介護認定率が5%減少できれば要介護者は744人減り、介護給付費は11億円億円削減されると推計できます。10%であれば22億円の削減です。したがって、地方都市が日本版CCRCを造った場合、予防効果により全体的な介護費用増加を抑制し、それ以上の経済効果が生まれるものと期待されます。

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