書籍
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地域包括ケアを実現する高齢者健康コミュニティ中国語訳老年健康-生活大社区
著者名 馬場園 明・窪田昌行 訳者名 劉 寧 ISBN 978-4-7985-0132-1 仕様 A5判 並製 192頁 C3047 発行年 2017年1月 訳者紹介
劉 寧 (NING LIU)
1997年中国四川大学外国語学部日本語科卒業、2002年日本学習院大学大学院経営学研究科博士前期課程修了(経営学修士)。その後文部科学省国費奨学金外国人留学生として日本学習院大学大学院経営学研究科博士後期課程単位終了退学。2004年ファイザー株式会社医薬品事業部入社、7年間勤務。2011年日本九州大学大学院医学系学府医療経営・管理学専攻入学、2013年修了(MPH)。
日本の医療介護市場及び関連政策制度に詳しい。得意分野は医療データ分析とマーケット分析。
日本病院管理学会会員、日本消費者行動学会会員、日本データサイエンティスト協会会員、中国中華医学会会員、米国PCORI(Patient-Centered Outcomes Research Institute)Ambassador訳者の序
介護生活と言いだすと、それは歳を取った後の話だと思う人が少なくありません。
歳を取った後の人生は本当にどうでもいいことでしょうか。アメリカで有名な心理学者のエリクソンが彼の著書「アイディンティティとライフサイクル」で、「人生における最後の段階は統合と自己肯定であり、今までずっと悩まされてきたことがここで答えを見つけるだろう」と言っています。
介護専門家のフランス人 Marescotti も彼の著書で、人類社会はせっかく私たちの先祖より何十年も長生きできるようになったのに、なぜ歳を取ったことに消極的なラベルを張らなければならないのでしょうかと指摘しています。
日本老年精神医学分野の第一人者長谷川教授は、歳を取ってからになって初めて今まで自分たちの自己満足の可笑しさに気づき、高齢者しか持っていないスピリチュアルに昇華していくとおっしゃっています。
今日の介護生活は実に大きな注目を集めた話題になっています。
欧州でも日本でも,人間性に満ちた哲学のレベルで高齢者生活を巡る議論が繰り広げられます。年齢は不幸の原因ではありません。高齢者を受け入れながらサポートする環境はないと、高齢者は幸せになれません。介護生活は人間同士の尊重と助け合いを意味しています。これらの理念は海外諸国の介護システムの発展に大きな原動力を提供しています。
このような背景の下、老人を収容するような過去の管理モデルが淘汰されつつ、高齢者の意思が尊重された上、住んでいる地域から支えられる生活支援モデルが主流になってきています。
両者の違いが次になります。前者は疾病又は障害が起こった後始めた挽回策であるのに対して、後者は高齢化社会の流れを真正面から向き合う前提の下、積極的に健康予防対策を行い高齢者生活の質を高める人生プランです。
この支援モデルは高齢者生活と介護に関する考え方に大きな変化をもたらしました。歳を取ってもできるだけ自立の生活を維持していくと同時に、地域・社会全体の支援体制が期待されなければなりません。これは訳者の私はこの「高齢者健康コミュニティ」から得られた最大の心得でもあります。
私は日本九州大学医学系学府医療経営管理学専攻で勉強していた時、日本の医療制度・高齢者医療政策の分野で著名な馬場園明教授と出会う機会に恵まれました。
馬場園教授と窪田先生が共著されたこの「高齢者健康コミュニティ」は、介護先進国のスウエーデンとデンマークの介護制度と歴史ばかりではなく、アメリカの CCRC モデルについても詳しく紹介してくれました。
この上で、二人の先生は日本の高齢者問題を解決するための答えも示してくれました。
即ち、一回だけ偶然の転倒や病気のせいで過去の暮らしをすべて中断せざるを得ないという残念の話をなくし、日本中の高齢者たちに自分の住み慣れた地域で残りの人生を続けさせていくために、地域包括ケアを実現する高齢者健康コミュニティを構築する必要があります。
また、老人医学・介護に詳しい馬場園教授は本書最後の章で、高齢者の直面する「喪失感」の生理的及び心理的な状態を科学的に分析し、それに対して介護者の取るべき介護の原則と行動規範も解説してくれました。
従って、本書は中国の医療・介護業界の皆さんに海外の介護事情を知ってもらうだけではなく、私たち周りの高齢者を理解し、自分たちの人生観を見直すためにも重要な意味を持っているのではないかとわたしは思います。
現在中国は急激な高齢化を迎えています。
著しい経済成長の次、医療・介護等社会保障制度の変革が求められます。
そのために、まず健全な政策制度作りが大前提であり、次に、海外の先進的な介護モデルを取り入れながら中国型の介護システムを構築していくことは重要です。
しかしながら、この目標を実現するには、高齢者と介護に対して社会全体の理解と意識改革が必要です。馬場園教授と窪田先生が共著されたこの「高齢者健康コミュニティ」が日本で出版された後、日本政府はすでに高齢者健康コミュニティの構築を日本経済改革の戦略的な一環として政策転換を図っています。
この著書の中国語版が中国で出版してから、我が国の介護政策や介護産業等に大きな影響を与えるようにわたしは大いに期待しています。
私たちの親世代はすでに高齢者になっていて、私たち自身も同じように歳を取っていくでしょう。
今から高齢者社会に向けて最善の介護体制を整えることは私たちひとりひとりにも密接に関係しています。私たち自身がいつか病気や障害に侵された日に、この本から教えられたことは必ず私たちの財産になるのではないかと強く思います。
中国の読者たちに本書を分かりやすく読んでもらうために、日本語原著の大量な文献を主要参考物とまとめて文末に添付しました。
また、出所を示していない図表は日本の原著者が作成されたもので、出所を示した図表は原書者が引用されたものです。
最後に、九州大学の馬場園教授と CCRC 研究所所長の窪田先生、及び日本九州大学出版会の皆さまにわたしにこの本を翻訳する機会を与えていただいたことに対して深く感謝の意を申し上げたいと思います。
また、仕事で一番忙しい時期に本書の中国語原稿の校正を助けてくれた父親にも感謝します。最後に、中国でこの本の最終出版に尽力していただいた中国四川科学技術出版社の秦伏男社長と罗小燕編集に感謝の気持ちを述べさせていただきたいと思います。
劉寧 2016 年 6 月に福岡 -
地域包括ケアを実現する高齢者健康コミュニティいつまでも自分らしく生きる新しい老いのかたち
著者名 馬場園 明・窪田昌行 価格 定価 1,800 円 (税別) ISBN 978-4-7985-0132-1 仕様 A5判 並製 192頁 C3047 発行年 2014年6月 内容紹介
高齢者に病気や障害が起こり、病院・施設に入院・入所したりすることによって、トランスファーショックが起こることが知られています。 トランスファーショックとは、「適応能力が低下した高齢者の環境が大きく変化すると精神的な落ち込みが起こる現象」です。 そして、不活発になったり、認知症が進行したり、孤独に苛まれて悲しむことになったりします。
この原因はケア・生活・人生が断裂してしまったことによるもので、悲しむべき実態といえます。
これを防ぐには、同じ場所で最期まで生活する"Aging in place"を実現する必要があります。 高齢者健康コミュニテイは"Aging in place"を実現するシステムです。
「高齢者健康コミュニテイ」の理念は、「高齢者の生活が継続できるようにケアを行い、 自分の人生で起こったことを前向きに肯定して統合すること」を支援することです。 すなわち、「高齢者が自分の人生はよいことも辛いこともあった。 さまざまな方にお世話になったが自分も社会に貢献できた。生まれてきてよかったと統合すること」 を支援するのです。
そして、「本人の意思の尊重」、「残存機能を活用した自立支援」、「生活とケアの連続性の維持」を 「高齢者健康コミュニテイ」の三大原則とします。
「高齢者健康コミュニテイ」の定義は、 「生活支援・健康支援・介護・医療サービスを提供する複合施設と自立型、支援型、 介護型高齢者住宅及び高齢者自宅をネットワークで結び、地域包括ケアシステムの機能を満たすコミュニテイ」です。
そして、高齢者が最後まで自立して生活できるように、「疾病や障害の予防の支援」や「こころのケア」に、 「ホームベース型健康支援」を用います。
「ホームベース型健康支援」の定義は、「自らの生活の場(Home)という安心・安定した環境のなかで、 本人自身の内発的動機付けを尊重し、目標達成型で生活習慣の改善をめざしてもらい、 支援者は本人ができることをできるように支援すること」です。
「高齢者健康コミュニテイ」の概念がわが国の高齢者のケアの再構築を促進し、 日本のどこでも高齢者の意思が尊重され、変化していくニーズに対応して、 同じ場所で継続的にケアを行っていくことができるようになることを期待したいと思います。目次
はじめに
第1章 わが国の高齢者を取り巻く状況と高齢者ケアの問題点
人口動態の変化と高齢化にともなう問題
長期入院が引き起こす問題
不足する高齢者に適した住まい
医療・介護制度改革の行方
今後の高齢者ケアのニーズ
第2章 米国のCCRCから学ぶ
米国のCCRC
CCRCとは
米国でCCRCが注目されている理由
3種類の住まいと医療センター・リハビリテーション施設
CCRCが入居者に提供する4つの特色
■継続したケアの提供を実現するシステム
■経営の安定性の確保
■一時金の返還システム
■質の高いホスピタリティサービスを提供するシステム
代表的なCCRCとエリクソンシニアリビング
米国のCCRC開発・運営事業者
■サンライズシニアリビング
■ホリデーリタイアメント
■ライフケアサービス
■エメルタスアシステッドリビング
エリクソンシニアリビングのケーススタディ
CCRCでの一日の生活の流れ
自立型住まいにご入居のAさん(女性、86歳)
自立型住まいにお住まいのBさんご夫婦(夫88歳、妻85歳)
支援型住まいにお住まいのCさん(男性、97歳)
第3章 高齢者健康コミュニティ
北欧に学ぶ高齢者ケア
スウェーデンの高齢者ケア
デンマークの高齢者ケア
今後の高齢者ケアのあり方
高齢者健康コミュニティの理念と原則
高齢者健康コミュニティ実現に必要な6つの要件
第4章 高齢者健康コミュニティのケーススタディ
玉昌会グループの取り組み
沿革と高齢者介護福祉事業への取り組み
高齢者健康コミュニティ構築へ向けての取り組み
■ニーズに応じた住まいの提供
■生活支援サービスによる自立支援
■終末までのケアの継続性
今後の課題
豊資会グループの取り組み
沿革と高齢者介護福祉事業への取り組み
高齢者健康コミュニティ構築へ向けての取り組み
■ニーズに応じた住まいの提供
■生活支援サービスによる自立支援
■終末までのケアの継続性
今後の課題
竜門堂グループの取り組み
沿革と高齢者介護福祉事業への取り組み
高齢者健康コミュニティ構築へ向けての取り組み
■ニーズに応じた住まいの提供
■生活支援サービスによる自立支援
■終末までのケアの継続性
今後の課題
梶原内科医院の取り組み
沿革と高齢者介護福祉事業への取り組み
高齢者健康コミュニティ構築へ向けての取り組み
■ニーズに応じた住まいの提供
■生活支援サービスによる自立支援
■終末までのケアの継続性
今後の課題
今後の高齢者健康コミュニティの構築に向けて
第5章 高齢者の自立を支える
高齢者健康コミュニティで行うホームベース型健康支援
ホームベース型健康支援
前向きの態度
自己効力感
周囲からの支援
ホームベース型健康支援の具体例
介護予防のための支援
介護予防とは
運動器の機能向上
栄養改善の支援
口腔機能向上プログラム
閉じこもり予防支援
高齢者のこころの支援
高齢者の睡眠障害の支援
認知症と支援
■認知症とは
■認知症の予防
■認知症高齢者の支援
うつ病と援
■うつ病とは
■うつ病の予防
■うつ病高齢者の支援
高齢者のこころの状態を理解するには
おわりに著者紹介
馬場園 明(ばばぞの あきら)
窪田昌行(くぼた まさゆき)
1959 年生まれ。1984 年九州大学医学部卒業,1990 年岡山大学医学研究科社会医学系衛生学修了(医学博士)。1993 年ペンシルバニア大学大学院修士課程修了(臨床疫学修士)。岡山大学医学部講師,1994 年九州大学健康科学センター助教授を経て,2005 年より九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座教授。著書に『介護福祉経営士テキスト実践編II 2 介護福祉マーケティングと経営戦略エリアとニーズのとらえ方』(日本医療企画,2012 年),『介護予防のための栄養指導・栄養支援ハンドブック』(共著,化学同人,2009年),『脱・メタボリックシンドロームのための健康支援』(中央法規出版,2008 年),『現代のエスプリ(No.440)』(共著,至文堂,2004年)等がある。
1954 年生まれ。1979 年九州大学工学部卒業,1981 年同大学院修士課程修了。1993 年ペンシルバニア大学ビジネススクール修了(MBA)。2000 年岡山大学医学研究科社会医学系衛生学(医学博士)。建設会社で病院の企画・計画を担当,経営コンサルティング会社では高齢者施設の研究・経営指導を行う。2006 年産学連携「医療福祉経営マーケティング研究会」事務局長。2014 年,日本型CCRC を普及するためにNPO 法人高齢者健康コミュニティを設立,理事長を務める。(株)CCRC 研究所代表,(株)プラスネット取締役。著書に『複合機能型シニア住宅の事業収支構造』(共著,綜合ユニコム,2009 年),『病医院の事業多角化戦略モデルプラン集』(共著,綜合ユニコム,2007 年)等がある。