アメリカで普及している終の住処「CCRC/高齢者健康コミュニティ」は、いよいよ日本でもその取り組みが本格的になってきました。今回は先日、国から発表された「日本版CCRC構想」についてお話しします。

 

いよいよ日本でもはじまったCCRCの施策


アメリカの高齢者住宅「CCRC(Continuing Care Retirement Community / 高齢者健康コミュニティ)」は、全米におよそ2000ヵ所あり、80万人程度の後期高齢者が人生を楽しみながら、医療・介護の心配のない環境で暮らしています。

 

そして最近、日本でも日本版CCRCへの注目が高まってきています。
国が発表した施策「まち・ひと・しごと地方創生」のなかで、「地方への新しいひとの流れをつくる」という目標を実現させるための施策のひとつとして、日本版CCRC構想がとり入れられたからです(図1参照)

 

■図1
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従来の高齢者施設との違い


そして6月1日、日本版CCRC構想中間素案が発表されました。その中で、日本版CCRC構想が目指すものは、「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」としています。

 

日本版CCRCと従来の高齢者施設との基本的な違いについて、次の3点があげられます。

 

第1に、従来の施設は、高齢者が要介護状態になってからの入所・入居が一般的であるのに対し、日本版CCRCは、高齢者が健康な自立した段階から入居し、できる限り健康寿命を長くすることを目指しています。

 

第2に、従来の施設等では、あくまでもサービスの受け手として「受け身的な存在」であった高齢者が、日本版CCRCでは、地域の仕事や社会活動、生涯学習に積極的に参加する「主体的な存在」に位置づけられています。

 

第3には、地域社会への開放性であり、本構想では高齢者が地域社会に溶け込み、地元住民や子供・若者などの多世代との行動・協働する「オープン型」を目指しています。

 

以上のような日本版CCRCを実現することは、人口減少が進む地方・地域では長年にわたり整備されてきた医療介護サービスが多く存在するため、都市圏から高齢者が移住等することで、それらの資源の活用や雇用維持が図られるため、日本版CCRCの意義は大きいといわれています。

 

日本版CCRC入所者の具体像


日本版CCRC構想の基本提言ついて、7つのポイントがあげられています。(表1参照)

■表1
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また入居者の具体像として、

 

①東京圏をはじめ大都市の高齢者の地方移住者と同様に、地方に住む高齢者が住み替える場合も対象
②健康自立
③幅広い年齢層の対象者
④できる限り多くの高齢者が可能となること

 

を提示しています。できる限り多くの高齢者が利用できる目安として、本構想では、厚生年金の標準的な年金額21.8万円の高齢夫婦世帯が入居できる費用モデルを基本としつつ、富裕層も想定した多様なバリエーションも可能にする。と提示しています。加えて表1に示した4つのポイントが、今後の課題になると思います。

 

我が国では、これまで予防・健康支援を中心とした自立型住まいは、ほとんど整備されてきませんでした。これを団塊の世代が後期高齢者となる2025年までに整備し、高齢者の最終ステージにおける生き方の選択肢を増やす意義は大きいものと思われます。

 

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が実施した「日本版CCRCに関する意向等調査」の結果では、現時点で地方公共団体の11.3%の202の自治体が、推進したいという意向を示しています(表2参照)

 

■表1
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現在、日本版CCRCは、自治体全体で担う街ごとCCRC、大学との連携を中心にしたCCRC、予防・健康を中心とした医療モデルなど、様々なモデルが検討されつつあります。それぞれの自治体や地域でそれぞれの特性に合った、高齢者の希望を叶えるCCRCが実現することを願います。

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※雑誌ゴールデンライフへの執筆記事から。