経済危機を乗り越えた米国CCRC
去る9月15日、「第一回最新米国CCRC視察・研究ツアー」を実施し、7日間にわたってアメリカ各地の最新CCRCを視察してまいりました。参加者は14名。学術研究者、医療法人・介護事業者の関係者、不動産、メディア関係者など、さまざまな業種の方々と同行しました。なかには「ユーザーの視点から実際のCCRCをを見てみたい」という後期高齢のご婦人も参加され、米国CCRCに深い洞察と感銘を受けられたようです。
今回の視察先は、CCRCが6ヵ所、前号でお話しした55歳以上から移り住むARC(55+community)が2ヵ所でした。
私自身、CCRCを視察するのは2007年以来、およそ8年ぶりのことでした。この間にリーマンショックが起こり、米国のCCRCは経済危機を乗り越えてきました。
本ブログで以前に紹介したCCRC「エリクソン・リビング」も、経済危機を乗り越えて、さらに素晴らしいCCRCを構築しており、創始者であるジョンエリクソン氏に案内していただきました。新たなエリクソンCCRCを始め、ほかの視察先の詳細は、また改めて紹介していきたいと思います。
人生の最終ステージは自己責任の方向に
今回の視察は、特に「日本型CCRC構築の手順」について考え、学び直す機会になりました。米国ではすべての国民が、日本のような皆医療保険・介護保険制度がないなかで、人生の最終ステージにおける医療介護(ロングタームケア)、および最終ステージの生き方を自己責任において決定しています。一方、保険制度を維持する日本においては、人生の最終ステージを社会保障制度に依存する傾向があります。
しかし今後は、社会保障制度改革が進むなかで、日本も自己責任において自分の最終ステージの生き方を決めていく必要がでてきました。すなわち、超少子高齢化が加速していく日本では、社会保障費の増加を抑える方向にあり、医療介護における自己負担の割合が高くなること、また年金の支給額も削減されていくことが考えられます。ですから日本においても、自分の健康や最期の生き方は、それぞれが責任を持つ時代に移行していくのではないかと推察されます。
こういったなかで今後は、医療・介護の心配をせずに、できる限り自立できる環境を支援・整備し、豊かで楽しい生活をサポートする「日本型CCRC」の開発は、重要な課題です。
CCRCが「地域包括ケアシステム」の拠点に
政府は、東京都市圏からの地方移住を、日本型CCRCの第一目標にあげていますが、日本型CCRCの構築には、それ以上の意義があると考えます。すなわち、下の図に示すように日本型CCRCを構築していくことは、厚労省が2025年の構築を目指している「地域包括ケアシステム」の拠点を整備していくことに繋がるからです。
日本型CCRCを拠点にすることにより、これまで整備がなかなか進まなかった「介護予防プログラムの開発」「24時間定期巡回・随時対応型訪問サービス(介護・看護)」の構築が可能になります。その成果として、各地域の要介護率が低減し、介護費用と医療費の適正化が図れると考えられます。
例えば、介護予防・健康増進プログラムが充実している、埼玉県和光市の要介護認定率は9%強です。一方、要介護認定率が25%を超えている県もあります。つまり、介護予防・健康増進プログラムの充実によって、健康寿命が延びていると考えられます。
日本型CCRCを中心に、介護予防プログラム24時間の在宅介護・看護サービス体制が整備されれば、要介護率を大幅に低減でき、多くの自立支援が可能になるのではないかと考えます。
このように、日本型CCRCと地域包括ケアシステムを両輪で構築していくことは、私たちが人生の最終ステージを素晴らしいものにするにあたり、大きな意義と波及効果があるものと考えます。
次号では、「日本型CCRC構築の手順」について考えていきます。