アメリカで普及して いる高齢者住宅 「CCRC」 の魅力のひと つ は、 生涯家賃が格安になるしくみにあります。これが日本でも実現できれば、 魅力的な 「生涯活躍のまち」 が、 各地に誕生するはずです。

 

健康寿命を延ばす「生涯活躍のまち」


CCRC (Continuing Care Retirement Community/高齢者健康コミュニティ)とは、
高齢者が自立しているときから介護や医療が必要になるときまで、継続的に生活支援や、生きがいサービス、ケアサービスなどを受けて自立した生活をできるだけ長くするための共同体
のことです。

 

アメリカでは、全米におよそ2千カ所のCCRCがあり、そこではおよそ80万人の後期高齢者が、人生を楽しみながら医療・介護の心配のない環境で暮らしています。

 

日本でも今、国をあげてCCRCを実現させるための取り組み「生涯活躍のまち」構想が始まっており、全国で263の地方自治体(全自治体の14・7%)がこの構想に取り組み、日本型CCRC「生涯活躍のまち」づくりを始めています。

 

魅力的なまちづくりが必要


「生涯活躍のまち」構想とは、わかりやすく言えば、自分のまちを見つめ直し、人々が移り住んでくる「魅力的な」まちづくりをする
ことです。

 

そして、東京圏や地方から移住を促すことが目的です。
そのためには、それぞれのまちで地域の特色を活かした「日本型CCRC」を構築していくことが大切です。

 

その際、わが国が2025年に実現をめざす「地域包括ケアシステム」と連携し、各自のライフステージに応じた暮らし方を提案することで、「健康で可能な限り自立して、前向きに生活したい」という高齢者の希望を実現します。

 

とくに生活コストの高い東京圏の高齢者にとって、地方は生活コストが大幅に低く、しかも長年にわたり医療介護サービスの充実してきた地方のまちでは、 医療・サービスの充実してきた地方のまちでは、 医療生を充実したものにできる点において、本構想は大きな意義をもっています。

 

ただし、50代、60代、70代の各世代における移住目的は異なっており、それぞれの世代の希望を実現するためには、マーケティングの考え方を活かしていくことが大切です。

 

とりわけ「STP」の3つ考え方が重要です。

 

は「セグメンテーション」で、市場細分化のこと。
大勢の人々を同じニーズ、 性質の固まり(セグメント)に分けることです。

 

は「ターゲティング」で、市場細分化した後に、だれを対象にするか選択することです。

 

は「ポジショニング」で、対象となる高齢者のこころの中に、そのまち独自の特色をどのように位置づけてもらうか、つまり、ほかのまちに負けない魅力をどうつくりあげるかが重要です。

 

米国CCRCは生涯家賃が格安


日本型CCRCの魅力づくりでは、「入居費用の適正価格を実現すること」が求められます。これには米国CCRCのしくみが参考になります。昨年9月の視察ツアーの中でも、家賃を入居一時金とし、退去後に返還するというシステムが魅力的で、これはわが国でも必要なしくみだと考えています。

 

下の図は、家賃型と分譲型の生涯家賃を比較したものです。

 

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たとえば①日本型CCRCで家賃型の場合、居室代家賃(40㎡程度の居室)が毎月10万円として、1年間に120万円を支払い15年間暮らすと、生涯家賃の合計は1800万円となります。

 

一方、②米国のように居室利用権とした分譲型の場合、分譲マンションの購入価格を2000万円として15年間暮らした後、米国CCRCを参考に購入時の80%でほかの入居者へ販売したとします。この場合の生涯家賃の合計は(2000万円―1600万円)400万円と格安になります。

 

両方の15年間の生涯家賃を比較すると、分譲型は家賃型のおよそ5分の1程度になります。

 

このような考え方が日本型CCRCでも必要であり、これが適正価格を実現することになると考えます。しかし、現状の日本の制度では、入居一時金は権利金として認められていません。そのため、購入した日本型CCRCの居室の権利を、退去後、次の入居者に販売することができないのです。

 

今回視察したメイプルウッド・パークプレイス(Maplewood Park Place)の入居費用の考え方(分譲型と利用権併用形式)は、日本での居室費用のしくみづくりに、とても参考になります。次回は、そのしくみと日本型CCRCへの応用について紹介したいと思います。

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※雑誌ゴールデンライフへの執筆記事から。